一匹少女が落ちるまで


『チュー』


園子のそのセリフに思わず、3日目の夜、理央と話したあの日を思い出して反応してしまった。



あの日の私は、逃げることをしなかった。


理央の顔が近づいてくることも、理央が何をしようとしているのかも、わかっていたのに。


「もしかして、紫月…理央くんと」



「違うっ!」



「へ?」


「あれは事故で…えっと…初めて図書室に来た時も理央は…」


そう。

あの頃と同じ『暇つぶし』をされただけ。


なのに。


まだ思い出しては恥ずかしくなるのは。


やっぱり…。


「その慌てよう。理央くんにヤキモチ妬いちゃうなー私」


園子はそう言って、私のベッドに背中をもたれさせながら伸びをした。



「で?理央くんと何があったの?全部ソノちゃんに話しちゃいなさいっ!」



園子にそう言われて、私はゆっくり首を縦に振ってから、あの夜にあった出来事を話した。



< 260 / 487 >

この作品をシェア

pagetop