一匹少女が落ちるまで
「2つ年上の幼馴染みがいるんだけど、俺はずっとその人のことが好きで。でもその人には付き合ってる人がいるんだ」
「え…」
星花は「意外だ」と言いそうな顔をしながらそう声を漏らした。
「それも、その付き合ってる人って、俺の兄貴なんだよね」
笑いながら言ったけど、いいながらなんだか悲しくなる。
口に出すと余計、それが現実なんだと再確認できてしまうから。
「…大雅くんの、お兄さん?」
「あぁ。家が隣だから昔から3人で遊ぶことが多くて、俺はずっと好きだったんだけど、やっぱりどこか2人には前からもう1つの2人だけの世界があった気がする」
正直、絢の話をするのはまだ辛い。
だけど。
同じ思いをした人に語るなら少し分け合えるのかもしれない。
「彼女と同じ高校に入りたくて、彼女にずっと家庭教師をしてもらってたんだ。動機は不純だけど、勉強だって、彼女の気持ちを自分に向けるための道具に過ぎなかった」
恋が成功しなかった人同士。
わけ合えたらいい。