一匹少女が落ちるまで
「だから、わかるよ。気持ち」
「……うん」
俺が彼女の目を見てまっすぐそういうと、彼女は顔を隠すようにまた下にしてそう頷いた。
多分、泣いてる。
鼻をすする音が聞こえるし、肩が若干震えてる。
「ずっと…ずっと、春樹しか考えられなかったの。絶対私たちはそうなるんだって…私には春樹しかありえないの…」
「多分さ、運命の人っていないと思うんだよ」
「……」
「その人しかありえないはさ、お互いが永遠を誓って、初めて言えることだと思う。その期間は相手を知るための期間だし、そもそも付き合っていなかったらその期間さえない。でも、不安になるのもわかるよ。自分はこれからその人よりも好きになれる人ができるだろうかとか」
「うん。絶対無理だよ」
「無理だと思ったら無理なんだよ。自分からずっと部屋に閉じこもってたら絶対に新しい風なんか吹いてくれない。自分で窓を開けるんだ。俺は、雨宮が窓の鍵を開けてくれた。だから今、乗り越えられそうだよ」