一匹少女が落ちるまで
【side 紫月】


──────授業中。

最近、理央の背中ばかり見るようになっている。


授業なんて、正直頭に入ってきていない。


『理央が好き』


その気持ちが0以上のものであることはよくわかっている。


だから余計に、隠さなきゃいけない。


新山さんのためにも。



きっと、理央だってあの新山さんから好きだって言われれば嬉しいに違いないし、2人は一緒になると思う。


美男美女で最高のカップルだ。


「……や!………雨宮!」



─────っ!!


「は、はい…」


名前を呼ばれてハッとして返事をすると、そこには教壇からこちらを見てる先生の姿があった。



「雨宮がぼーっとするなんて、珍しいな。体調でも悪いか?」


「…いえ」


「そうか、じゃあ、68ページ読んでくれ」


「…はい」



私は席を立ちながら、チラッと彼の席を横目で確認すると、彼はこちらをまっすぐ見ていた。


園子がああいうことを言うから余計…。



意識して、思うように体が動かせなくなる。


どうしよう。


私じゃないみたい。



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