一匹少女が落ちるまで


「あんたさー、桜庭くんに好かれてるとか勘違いしてるんでしょ?違うからね」


しゃがんで私の髪を乱暴に捕まえると、城ヶ崎さんは力強くそう言った。


「好かれてるなんて、思ってないです」


好いちゃいけないから。

理央の中でも私は0だから。


そんなこと思わない。



「はー?あんたのその余裕ぶっこいてるところ、どー見てもそうでしょ。心も奪うしさ」



「新山さんは…」


「何よ」


新山さんは、自分から城ヶ崎さんたちから距離を置くことを選んだんだ。



お母さんのため、自分のため。


でもそれは、今私がここで言っていいことじゃない。



「…やっぱりそうなんじゃん。なんなの?本当ムカつく。桜庭くんは私たちのもので、あんたみたいなブスメガネのおもちゃなんかじゃないのよっ!!」


────────っ!!




─────ガラッ



城ヶ崎さんの足が、私の体をめがけて飛んできそうになった時。


突然倉庫の扉が開いた。



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