一匹少女が落ちるまで
【side 理央】


………あ。


俺の前を歩く女子生徒をみて、声が出そうに
なる。


長いサラサラの黒髪。


紫月だ。


もうすぐにわかってしまう。


最近、全然まともに話していない。


紫月はまだ、あのキスのことを怒っているのだろうか。


もう、俺のことを嫌いになったのだろうか。


色んなことを自分だけで考えるのは、もう疲れた。


初めから、そうだった。


赤羽のことも新山のことも、紫月に助けられてばかりだったから。


なぁ、紫月。


もう1度、あの頃のように話そうよ。


そうして、また俺を優しくダメなやつだと叱ってくれ。


じゃないとまたダメな俺に戻りそうだ。



「…紫月っ」



俺はそう、前を歩く彼女の名前を呼んだ。



クルッと振り返った彼女は少しぽかんとしていて。


そんな顔もやっぱり愛しくて。


「ちょっと来て」


俺は彼女の腕を掴んでから、あるところへと向かった。




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