一匹少女が落ちるまで
「…なぁ、紫月…もう、しないから」
君との時間が大切だから。
「……」
「もう紫月には指一本触れない」
君に触れるのを我慢する。
だからもう一度。
「だからまた、前みたいに話してくれない?一緒に図書室にいてよ。最初の頃みたいに邪魔なんてしないから」
「……嫌です」
「え、どうして…」
「理央とはもう一緒にいられない」
「なんで…」
「理央はもう、赤羽くんや新山さんって友達が出来たじゃない。2人の方が、私よりも理央のことを知ってくれてると思う。新山さんなんて…特に似てるし」
「…なんだよそれ。紫月が最初だし、紫月がいねぇと…。今度は4人で座れば…」
「嫌なんです!これ以上、乱されるのは。私の邪魔しないでくださいっ!」
紫月が初めて、大きな声で怒鳴った。
目の前の彼女は顔を真っ赤にしていて。
こんな状況でも、そんな彼女の頬に触れたいなんて思っていて。
俺は本当に、どこまでもおめでたいやつだ。
彼女の本当の気持ちも知らないで。