一匹少女が落ちるまで
紫月は同じだった。
同じように、悩んでいた。
『ありがとう』
俺が班のメンバーに選んだ時、紫月は確かにそう言った。
1人だということを痛感させられるあの時間を不安に感じていた。
『隠れたらいいですよ』
図書室で誰かに見られていないかと怯えていた俺を見てそう言ってくれた。
俺に感情移入してくれなきゃあんなこと言えない。
強そうに見えるだけで、顔に出にくいだけで。
1番色々考えているし、よく見ていれば、不機嫌そうに眉を寄せることだって、嬉しそうに口元を緩めることだってある。
紫月だって同じだ。
俺たちより強いかもしれない。
だけど
同じように悩んでいたのは事実だ。
俺や新山に足りないのは。
きっと強さなんかじゃない。
「新山さん、この曲の最後の歌詞言える?」
俺はそう言って、ヘッドフォンを彼女の耳にすっぽりとつけてあげる。
きっと君だってわかっているよね。