一匹少女が落ちるまで
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「……くんっ!桜庭くんっ!」
「あっ」
後ろから必死に俺を呼ぶ声に、俺は我に返って足を止める。
「新山さん…ごめんっ」
「ううんっ、平気平気っ!ちょっとびっくりしただけだよ」
「うん、気をつける」
新山は「桜庭くんはそればっかだね」と言って笑った。
「えっと、お昼、ここにしよっか」
俺はそう言って、横の『イタリアン』と書かれた黒板popが出されていたお店を指差した。
「うんっ!いいねっ!桜庭くん、その前に…」
「ん?」
少し頬を赤く染めた彼女の人差し指が俺と彼女の間を差したので俺は目線を下に向ける。
「あっ、ご、ごめんっ!!」
早歩きでここに来るまでの間、ずっと新山のこと引っ張ってたんだ俺…。
「ううん。よし、入ろー!」
彼女は優しく微笑んで首を振ると、お店の中へと入って行った。