一匹少女が落ちるまで
「あのさ、新山さん」
お冷やを一口飲んでから、桜庭くんが話し出した。
ごめんなさい、桜庭くん。
ごめんなさい、雨宮さん。
多分私は…。
あの歌詞のように、雨宮さんを信じることなんて怖くてできないの。
「…紫月、俺のこと何にも言ってなかった?悪口でもなんでもさ…」
「うーん…特に…は」
何もかもわかっているのに。
嘘をつく。
桜庭くん、雨宮さんと一緒になる前は、もっと演技がうまかったじゃない。
面白くないことにも笑えていたし
ちゃんと人気者だったじゃない
それなのに今は…。
どうしてそんなにわかりやすい顔をして、雨宮さんの名前なんか出しちゃうの?
それじゃまるで…。
雨宮さんのことが好きだって言ってるようなもんだよ?
そんなこと初めから知っていたはずなのに。
そもそも、雨宮さんのおかげで変わろうとしている桜庭くんに惹かれたはずなのに。
今は、私といるのに彼女の話をしちゃう桜庭くんにムカついて、桜庭くんの頭いっぱい自分にしちゃってる雨宮さんにかなり嫉妬してる。