一匹少女が落ちるまで
【side 理央】


────────

…………


「美味しかったねー!!」


そういって、クルッと振り返って笑う新山の髪が、風に吹かれてなびく。



よかった。

喜んでくれて。


「あぁ。今度は4人で出かけられたらいいな」



絶景スポットと有名な場所で、夕日が沈みかけている空を見つめながら、俺はそう言う。



俺はずっとバカだった。


「ねぇ、桜庭くん…」


彼女のその時の声が


震えていたことに


後になって気付いたんだから。



「ん?」



「…今日はどうもありがとう」


「いえいえ。こちらこそだよ」


「ねぇ、桜庭くん…」


「何?新山さん」


なんだかしょんぼりしてるように見えるのはまた俺のおめでたい勘違いなのかもしれないなんて。


「今日だけじゃなくて…ずっと、ありがとう」


「俺よりも、それは、紫月に────」



「ねぇ、桜庭…く…ん?」



─────っ?!



なんで。


なんで俺は。


今まで気が付かなかったんだろう。



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