一匹少女が落ちるまで
そんなことを冗談でいうような子じゃないことくらいわかっている。
「いつから…」
「え…うそ…桜庭くんてっきり気づいているかと…」
だよな…。
普通そう思うよな。
でも今やっと気づいたんだ。
今考えればおかしな話じゃないか。
図書室で隣に座ったこととか、2人で出かけようとか…。
勘違いしようともしなかった俺。
そんなことをされなくても言われなくても、昔の俺なら顔見ただけで分かっていたじゃん。
でも気付かなかったのは、本当に俺が、紫月しか眼中になかったからで。
頭の中は紫月ばかりで、自分が紫月ともう一度近づけるためにはどうしたらいいのかばかりを考えていた。
近くにいた新山の気持ちに気付けなかった。
「全然…知らなかった…ごめん」
「え〜あんな思わせぶりなことしといて…知らなかったんだ…」
新山は涙を流しながら笑って薄暗くなった夜空を見上げた。