一匹少女が落ちるまで
「失望しちゃったかな…」
「え、なんで…」
「桜庭くんが雨宮さんのこと好きだって気付いているのに気を使わないで、逆に桜庭くんに近づこうとしたから」
「失望なんてしないよ。正直に話してくれたことはすごく嬉しい」
自分の気持ちを抑えて誰かのために行動するのなんて、難しすぎる。
「…そっか」
小さかったあの頃より
うまくいかないことばかりが多いな。
ただ信頼できる友達を作りたいだけなのに。
ただ好きな人と同じ気持ちになりたいだけなのに。
体は大きくなって、できることはきっと昔より増えたはず。
それなのに、
誰かのために自分の気持ちを抑えたり、時には素直になってみたり。
そういうバランスを取ることが出来なくて。
結局、嘘つきの仮面を被って行動して、心が疲れきってしまう。
俺たちはまだ、自分の感情を完全にコントロールすることができない子供で、未熟だ。
『紫月が好き』
突き放されたはずなのに。
まだ待っているのも、期待しているのも
君と心から信頼し合える友達以上になりたいからだよ。