一匹少女が落ちるまで
………
「雨宮さん。あのね……紫月ちゃんって、呼んでいい?」
帰り道、新山さんが恥ずかしそうにそう言った。
「もちろん。嬉しいです。私もいいですか?」
「え?」
「心…」
「はっっ!」
目を丸くして頬を少し赤くして驚く彼女を見ていると、なんだかこっちまで恥ずかしくなってしまう。
「…な、なんか、照れますね」
「うぅー!何今の紫月ちゃんっ!可愛い!」
「…え?それは心のほうでしょ」
「不意打ちなの!女の子にこんなにドキドキしたことってないよ!今のもう一回!」
「…嫌です」
「なんでー!もっかい呼んで!紫月ちゃん!」
「ちょっとうるさいです」
「フフッ」
『友達になりましょう』
から始まったお友達は初めてで。
修学旅行の夜、友達宣言した時よりも。
今の方がずっと。
彼女を愛おしいと思える。
それは彼女が本当の気持ちで私と話してくれたから。
今は心のおかげでもう少し自分の気持ちに素直になれそうな気がする。
「ありがとう」
嬉しそうに走る彼女の背中に、
私は静かにそう呟いた。