一匹少女が落ちるまで
「……」
「……」
「……」
「…あ、じゃあ、俺帰るわ。勝手に上がったりして悪かったな…」
先に沈黙を破ったのは理央で、彼はソファから立ち上がると玄関へ向かおうとした。
理央の背中。
理央が帰ってしまう。
うまく言えないことばかりで
思うように言葉が出てきてくれなくて、
私はただ、彼の背中を見つめることしかできない。
「…夕飯までいればいいのに」
────っ?!
そういった声の主は、今まで私と理央を黙って見ていた星花だった。
星花の声で、理央の足が止まる。
「ちょっと、星花」
「いいじゃん別に。前はしーねちゃんすぐに2人のことあげてたじゃん」
「あれは、テスト勉強が…」
「じゃあまた2人で勉強すればいいんじゃない?勉強はいくらやっても無駄じゃないよ」
いつも興味なさげにふらっと自分の部屋に消えていく星花が、今日はなんか違う。
一体…何があったんだろう。