一匹少女が落ちるまで
【side 理央】


『指一本触れない』


俺のそんな約束は、簡単に破られてしまった。


いやでもさ、俺にも言い分があるわけで、

彼女がもしあの時、俺とまた一緒に過ごしてくれるのを選んでくれていたら、頑張って我慢しただろう。


でも、彼女はそんな俺の願いを拒否したんだから、あの時の約束は無効である。



キッチンで、紫月の隣に立った瞬間から、

俺は彼女に触れたくて仕方がなかった。


修学旅行が終わって、どれほどの長い時間、俺が我慢したと思っているんだ。



「…理央、そろそろ離……」

「やだ」

「理央…」


呆れるならそうしてくれ。


俺は自分が思っているよりも、独占欲が強くて、甘えたがりだったみたいだ。



< 332 / 487 >

この作品をシェア

pagetop