一匹少女が落ちるまで
「本当、ありがとう」
「なんですか急に…」
「全部。紫月のおかげで、少しずつだけど俺、変われてきてるから」
「それを言ったら、私だって理央に出会って変わりました」
「え?」
予想外のセリフに思わず聞き返す。
「人に興味なんてなかったし友達を作る気なんてなかったから。だから、理央に出会って私もよかった…」
─────っ?!
暗くてよかった。
こんな真っ赤な顔、見せられねー。
「出会ってよかった」なんて。
顔の熱が冷めない。
「本当、紫月は喜ばすのがうめーよな」
「なんですかそれ」
「自分にはいいところなんて1つもないのに、あるんじゃないかって錯覚しちゃう」
「…私は、理央のいいところたくさん知ってますけど?」
────っ
「私は…ちゃんと知ってますから。ちゃんと理央の味方ですから─────」
彼女の言葉にドキドキと胸が鳴る。
自分の味方だと言う人が1人でもいることが。
こんなに嬉しいことで。
こんなに幸せなことで。
「…あーあ、だから余計好きになっちゃうじゃん」
俺のそんな声は、
とっくに眠ってしまった彼女には聞こえていなかった。