一匹少女が落ちるまで
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────ガチャ
「ただいま」
「お帰りなさい」
カチャカチャと料理する音が響くダイニングの方に顔を出して声を出すと、母さんが優しい声でそう言った。
「ごめん母さん。ちゃんと連絡しないで…」
「ううん。山岡くんのところに泊まったんでしょう?」
「……」
言えない。
ごめんね母さん。
俺はもうとっくに、バスケ部をやめているし、山岡とも距離を置いているんだ。
中学の頃、家族ぐるみで仲が良かったように見えていた俺と山岡。
苦しかったなんて、母さんの顔を見ながら言えるわけがない。
────トン トン トン
口ごもっていると、階段から足音が聞こえてくる。