一匹少女が落ちるまで


「…うん、まぁ、いつも通りだよ」


「そうか。お前は父さんたちの唯一の期待なんだから、どっかのクズみたいに失望させないでくれよ」



────っ!


「………あ、うん」



俺がそう返事をすると父さんは満足そうな顔をしてから、後ろで隠れるようにキッチンの方に立っていた兄貴に目をつけた。



「はぁ……お前はいつまで父さんたちを失望させたら気が済むんだ。絶対に外になんか出るんじゃないぞ。近所にお前のことがバレればそれこそ桜庭家の恥だ。お前は留学に行っている。そうだよな?」


「……」


父さんのひどい言葉に、兄貴はゆっくりとうなづいた。


これが桜庭家の本当の姿。


モデルの母親と家族を支えるために必死に働く父親、留学に行ってる長男に、バスケも勉強もできる次男。



そんな表の俺たち家族は全くの偽りだ。



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