一匹少女が落ちるまで


「風間せんぱ───」


──っ?!


彼の名前を呼ぼうとすると、いきなり腕を掴まれて、踊り場の角に追い詰められてしまった。



「せ、先輩?」


片手を軽く壁に置いてから、こちらを見つめる風間先輩。



やっぱり…この間から距離が近く感じる。


まだ朝の早い時間だから


階段の人通りはすごく少ない。


誰かくれば、先輩も少し離れてくれるかもしれないのに…。


階段の下を見ても人が来る気配はない。


「…違うじゃん」


私の耳元でいつもより少し低い声でそう言った先輩。


「…えっと…」



「灯也、でしょ?」


「っ……」


どうして…。


どうしてそんなに、呼び方にこだわるの。




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