一匹少女が落ちるまで
「…理央っ」
早歩きで私の手を引っ張ったままの理央は私が呼んでも声を出さない。
握られている手に、トクトクと胸が鳴っているのがわかるけど、治ってほしいと思えば思うほど鼓動が速くなる。
「…すげー久しぶりだよね」
理央がそう言って立ち止まったのは、
私たちが初めて話したここ。
図書室の前だった。
「…まだ開いてないよ」
『close』と書かれたドアにかけられた板を見て理央にそう言う。
「ふふーん。紫月がいない間に、俺結構図書の先生とも仲良くしてんだよ〜」
そう隣で得意げな顔をしてる理央に私は首をかしげる。
どういうこと?
理央は得意げな顔で『close』と書かれた板をドアから外すと、板の裏の面をこちらに「ジャン」と見せてきた。