一匹少女が落ちるまで
見せられたその板には、オープンと書かれた文字の上に、鍵がセロハンテープで止められていた。
「これって…」
「いちいち一階の職員室まで鍵取りに行くのだるいから、先生ここにつけてんの。図書委員の人たちと俺だけはこのこと知ってんだ。あと、今日から紫月もね」
「え…」
1年の頃から図書室に通っているのに全然知らなかったな…。
そりゃそうか…。
「でも…どっちにしろ、HR始まるからそろそろ教室に行かなきゃ」
私と理央はまだカバンを持ったまま。
「うん。わかってる。ちょっとだから」
理央はそう笑うと、鍵穴に板からとった鍵を入れた。
その時の理央の笑顔が、さっきうちを出た時の笑顔と違う気がしたけど、理央はまだ何か悩んでいるんだろうか。
私はドアを開ける彼の背中をただジッと見つめる。
─────私には
全部本当のことを話してほしい。
そんなことを彼の背中に心の中でつぶやいた。