一匹少女が落ちるまで
「……」
「あぁー。これこれ、ほんと落ち着く」
隣に座った理央はそう言って、私の肩に自分の頭を置いた。
ここに重みを感じたのが、もうずっとずっと昔のことだった気がして。
『私も落ち着く』
そんな声が思わず出ないように気をつける。
「心には…しなかったんですか?」
自分でもバカなことを言ってるのはわかっている。
でも、ずっと引っかかっていたそれはもう我慢の限界だった。
「え、紫月、新山さんのこといつから下の名前で?」
「私が質問しています」
自分の声がちょっと不機嫌な声になってしまったのは感じたけど、それほど本気で聞いている証拠だ。
「はいはい。新山さんは友達だけど…紫月はなんて言うか…特別…だから」
────っ?!
それって、どう言う特別なのだろうか。
友達でもない0という特別?
それとも……。
「…なんで、心のこと振ったんですか」
「……っ!」
私が聞くと、理央は驚いた顔をしてこちらを見た。
なんで知ってるんだって顔だ。
「昨日、理央から電話が来る少し前まで、心といました。それで…振られたって聞いて」
「聞いて…なに?」
「えっ……っ!」
「紫月は、俺と新山さんに付き合って欲しかったの?」
理央は、体を背けていた私の肩を掴まえて自分の方に向けさせると、グッと顔を近づけてきてそう聞いた。