一匹少女が落ちるまで
「早く教室に─────」
────ギュッ
私がそう言って、デスクの下から出ようとすると、理央に腕を掴まれた。
「…まだ、ちゃんと答え聞いてない」
「……」
もう、理央にはこれ以上嘘をつきたくないから、だから聞かないでほしい。
もし私が本当の気持ちを伝えたら、そう思うと、怖くて伝えられない。
「紫月」
彼は私の名前を呼ぶと、私の肩を両手で捕まえてから、動けないようにした。
理央の顔だんだん近くなっていく。
あぁ、ダメだ。
まともに見られない。
「心は可愛いから…理央とお似合いです。だから、てっきりそうなると思ってました。修学旅行だって2人がうまくいけばいいと思って理央たちを2人きりにするようにしました…」
どうして…。
理央との至近距離に我慢できず、また心から思ってないことを話してしまう。
うまくいけばいいのになんて、口では言ってときながら心のどこかでは「それだと嫌だ」って思っていたのに。
結局、嘘をつくことになる。