一匹少女が落ちるまで


みんな、あいつに取られていく。


桜庭くんだって…。


それに…。


「城ヶ崎、絵の具貸してくれない?俺、今日絵の具セット忘れてさ…」



雨宮と心をギッと睨んでいると、誰かに声をかけられた。



「あ、山岡くん。うん。いいわよ」


私は慌てて目線を声をかけてきた彼に直して笑顔を向けてそう言った。



桜庭くんと中学から一緒にバスケをしていた山岡くんだってきっと私と同じ気持ちだろう。


彼だって、彼女に桜庭くんを取られたんだから。



「城ヶ崎」


「……」


山岡くんは私の肩を掴まえて、私のことを呼んだ。



「うまいな、絵」


彼はそれだけ言って、私の肩トントンと優しく叩くと、仲間の輪に帰って行った。



何今の…。



まるで…私のことわかってるみたいな…。


そんなこと、あるわけないのに。



誰も、私の気持ちなんて


わかんない。



わかってもらいたいなんて思わない。





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