一匹少女が落ちるまで
「…そんなこと…しないよ」
心は私の目をまっすぐ見て、涙を流した目でそう言った。
「は?」
意味がわからない。
クラス1、ううん学校1権力のある私に逆らうなんて、どうかしてる。
「心、あんた自分が何言ってんのかわかってんの?」
「…わかってるよ。私、紫月ちゃんが城ヶ崎さんに嫌がらせされてるの、もう見て見ぬ振りなんてしない!」
……っ!
私のイライラはピークに達する。
どうして。
おかしい。
「……ふざけないでっっ!!」
「……っ」
──────バシャン!!!!
私は、洗い場に置かれたミニバケツに入った絵の具で汚れた水を心に勢いよくかけた。
こんなことでおさまらない。
どうして、どうして、
あの女は私のものを奪っていく。
「おい!!お前ら何やって…」
私たちの口論に気付いた美術の先生が駆け寄ってくる。
でも、私のことを見るなりグッと声を出すのをやめた。
先生たちだって、私に文句は言えない。
私がパパに何か告げ口するのを恐れているから。