一匹少女が落ちるまで
「ダメっていうか…私、雨宮さんのこと嫌いですよ」
「そりゃ、雨宮を傷つけた城ヶ崎さんのこと、まだ怒ってるよ。だけど今は、違うじゃん」
「…違う?」
どういうことだろう。
さっき何があったのか理解している先輩なら、私があの時雨宮を傷つけたように、私が心やあとの3人を傷つけたのだって同じなのに。
「今1番傷ついてるのは、城ヶ崎さんでしょ?」
「…何それ」
私が、傷ついてる?
何それ…。
傷つけてるのは私の方で…。
「あれ、図星?」
「別に…」
「知ってる?ここ、雨宮と桜庭の特等席」
「…えっ」
どうしてそんなことわかってて、わざわざここに座るように言ったんだろう。
「桜庭はここに座るようになってから、変われたみたいよ?」
「……」
何それ。
私に変われって言ってんの?
「変わるのは、私じゃなくてみんなよ」
「…みんな?」
「そう。パパも雨宮さんも心もクラスの奴らも」
「…パパ?」
「……っ」
パパのことを口に出してしまって後悔する。
それに風間先輩は、パパと知り合いだって話してたっけ…。
「…なんでも、ないです」
「…なるほどね〜。城ヶ崎さんアレだよね、ツンデレっていうの?」
─────っ?!
「いきなり何いって…別にそんなんじゃないです」
「素直な気持ちは口に出さないんだねってこと」
先輩はデスクに頬杖をつくと、笑った。
その笑い方が、ほんの1つしか年がちがうのにすごく大人っぽく見えた。