一匹少女が落ちるまで
「私は今まで、パパに褒められた記憶なんて1つもないの。パパは私がどうなろうときっとどうでもいいんだと思う」
「…そんなこと」
「パパが人を褒めるとこなんて見たことがなかった。だけど、入学式のあの日…新入生代表で挨拶した雨宮さんを見て、帰りの車の中で、パパ言ったの、『とても優秀な子だ』って」
思わず笑いが出そうになるくらい、
自分で話ながら悲しい。
「私のことはこれっぽっちも褒めてくれなかったのに…初めて見た雨宮さんのことをすごく嬉しそうに褒めるもんだから。もうその時からなの。雨宮さんに目をつけてたの」
「そう」
「桜庭くんだって心だって同じ。私の周りにいる人はみんな、雨宮さんを好きになる。それがすごく…すごく…嫌で」
喉の奥が苦しくなって、私は俯く。
弱いなんて思われたくない。
絶対に、人前で泣いたりなんかしない。
デスクの下でスカートを両手で掴まえる。
─────ギュッ
………っ?!
突然、目の前が真っ暗になって、私は柔らかいものに体を包まれた。