一匹少女が落ちるまで
「勘違いしないで。別に君のことが好きになったとか守りたくなったとかそんなんじゃないから」
頭の上でそんな声がする。
「たださ、本当の気持ち話せる人がいないなら、俺がそれになってもいいよってこと。雨宮のことが好きなのは変わらない。ただ、今の君は見てられないから」
「……っ」
人に抱きしめてもらったのなんて、いつぶりだろう。
パパにはもう長いごと抱きしめられていないし、そもそもこの歳で抱きしめてもらうなんて、恥ずかしすぎる。
「君のお父さんね、言ってたよ。いつか娘が言ってくれたんだって。パパにハンバーグ作ってあげるって」
何それ…。
何それ…。
とうとう、私の目から一粒の涙が落ちてしまった。
でも、風間先輩は私が隠そうとしてることを知ってか、絶対に抱きしめる手を離さないで、私の頭を手で包んでくれた。