一匹少女が落ちるまで
「…ママ、ごめんなさい」
私はハンバーグを焼き、涙を手の甲で拭きながらそう声に出す。
桜庭くんや心が変わったように。
私も、自分のなりたいひとになりたい。
上に立つことや誰かを見下ろすことばかりにこだわる人間じゃなくて。
大切なひとのために
全力を尽くせる人に。
そのためにまず、
一歩。
踏み出さなきゃ。
─────
─────
「…ただいまー」
いつも無視してしまう、もう聴きなれた声。
まず一歩目。
今日はそんな声に
「…おかえり、なさい」
なんだかすごく緊張して小さくなったけど、そう言ってみる。