一匹少女が落ちるまで


「食べよ。うん。あ、手洗ってくる。玲奈、手洗った?」


「フッ、今までご飯作ってたんだよ?とっくに洗ってるって」


「あ、あぁ、そうですよね」


パパはそう言って、洗面所に向かった。



「ふー」

ちょっと深呼吸。


私だけじゃない。


きっとパパも緊張してる。

だって、今まで反抗的だった娘が、いきなり夕飯を作って待ってるんだもんね。



──────



「…ハンバーグだ」



洗面所から帰ってきて椅子に座ったパパは目の前の料理をみてそう呟いた。



「…うん」


「玲奈、作ったことあるの?」


「ないよ。感覚。ママが作ってたのは昔見てたから。だから、美味しくなくても我慢して」


「フッ、あぁ、わかった。

じゃあ、いただきます」


「いただきます」


私とパパは一緒に手を合わせてそう言った。



パパが嬉しそうにハンバーグをお箸で切るのをジッとみる。


パパの最初の反応が大事だ。


見逃したら絶対にダメ。



「見た目は完璧だよ」


パパはそう言って、ハンバーグを口に運んだ。




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