一匹少女が落ちるまで
「…うん。うん」
パパは何度も頷きながらハンバーグを噛む。
あれ…反応…薄い?
「えっ、やっぱりまずかった?」
私がそう聞くと、パパは目頭から口元を手で抑えながら首を振った。
「…美味しい。すごく美味しいよ」
「ほんと?」
私はそう言って、急いでハンバーグを運んだ。
うん。
美味しい。
懐かしくて、あったかい。
「…ぐっ…ぐすん」
鼻をすする音が聞こえて、私は正面のパパをみる。
顔が見えないように、ハンバーグをずっと見ながら食べてるパパ。
「…ほんとうまい。…ママの味だ」
「パパ…」
初めて、パパに褒めれて。
初めて、パパの泣き顔をみた。
「ごめんな、玲奈」
「…どうしたの急に」
「今まで、全然構ってあげられなくて」
「子供じゃないし別に大丈夫だよ。パパも忙しんだし」
「あぁ、ありがとう」
そう言いながらも、パパは鼻をすする。
泣きすぎだよ。
「そんな泣かないでよ。なんならこれからずっとご飯作るようにするし」
ほんの少しの勇気だ。
初めの一歩を踏み出すことさえできればあとは簡単で。
「無理はしないでって言いたいところだけど…どうしよう。パパ、今すごい幸せだって感じてる」
そんなこと、言わないでよ。
笑うって決めたのに。
普通にするって決めたのに。
涙が出るよ。