一匹少女が落ちるまで
「私ね、告白しようと思って」
「えっ」
「春樹に」
その名前はこの前公園で会った時、聞いた覚えがある。
「告白って…そいつ彼女いるんだろ?」
「うん、いる」
平然と口にどんどんパスタを運んでいく星花は、その細い体のどこに入るんだっくらい華奢だ。
「じゃあ、なんで…」
「んー…なんか、区切りつけないとダラダラして全然前に進めない気がして。あと、自分は何もしないのに、しーねーちゃんや理央くんのこと応援するのも違う気がして」
星花はそう言って、メロンソーダを飲む。
「…なるほどな」
星花の言いたいことはわかるし、大切なことだと思う。
でも、振られるってわかってて言うなんて…。
俺にはそんな勇気…。
「告白しないまま、次に進むってことはさ、その時の恋をなかったことにするみたいで、なんか嫌なの。春樹のこと好きだった時間は苦しいこともあったけど、それよりも楽しかった時の方が多かった」
「そっか」
楽しかった時…。
俺が恋をしてて楽しかった時。
それは、絢が俺の部屋にきて家庭教師してくれてた時だ。