一匹少女が落ちるまで


「お前ら、城ヶ崎にムカついてたんなら、初めから一緒にいなきゃよかったろ。なんで今更手のひら返して、城ヶ崎が雨宮にしたみたいなことしようとしてんの」


「……だって、最近の城ヶ崎さんひどかったし…」

「そうだよ。城ヶ崎さんのお父さんのこととか怖くて、みんな本当の気持ちなんて言えなくて…」


「ちげーだろ」



女子たちの言い分に山岡は見たことない険しい顔で彼女たちを睨みつける。



「お前らが怖かったのって、城ヶ崎の親父さんとか城ヶ崎自身じゃねーだろ」



腕組みして座る山岡は、まるで今まで我慢してたものが全部爆発したみたいに見えて。


「お前らが怖かったのは、空気だろ。城ヶ崎だけじゃない他の人の目だろ」


「……っ、、」


「ひどいのは、城ヶ崎よりも、ずっと見て見ぬ振りしてたのに今更城ヶ崎だけ攻めてるお前らじゃん」



「っ!それなら!山岡くんだってそうじゃない!城ヶ崎さんが雨宮さんのこといじめてても止めたりしなかったでしょ?」


目に涙を溜めながら必死に反論する女子。



「はぁ?何それ。見て見ぬ振りなんかしてないよ。俺はちゃんと見てた。俺はちゃんと城ヶ崎の味方だった。だから止めなかったんだ」


「なにそれ…」


「俺は今だって、雨宮たちのことムカつくし、理央や赤羽や新山さんにだって腹が立ってるよ」


─────っ?!

は?

なんで俺ら???


山岡の口から自分の名前が出てきて少し戸惑う。


だけど、彼を見てるとなんとなくわかった。


「俺はずっと、城ヶ崎の味方だ」



──────なんだこいつ。


彼のその目。


少しだけ赤いように見える黒髪に隠れた耳。



こいつ、城ヶ崎のこと好きなんだ。





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