一匹少女が落ちるまで
【side 透】


それは、1年前の冬休みだった。


俺はどちらかというと、彼女は苦手なタイプで。


お嬢様で一人っ子だからきっと自分の思い通りにならないと許せないようなわがままな子なんだと思っていた。



でもあの日───────。



部活が終わった後の帰り道だった。


世の中はクリスマスシーズンで周りのイルミネーションがキラキラしていたからよく覚えている。


そのおかげで、カツカツとヒールの音を鳴らして巻かれた茶色い髪を揺らしながら歩いてる彼女がやたら綺麗に見えたんだ。


父親は大手企業の社長で、学校に多額の寄付をしてくれてると噂の城ヶ崎 玲奈。


学校の登下校はいつも車で送迎。


そんな彼女が、冬休みに1人でモコモコのコートを着て歩いていたのにすごく違和感を感じたっけ。





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