一匹少女が落ちるまで
少し跡をつけた俺は、あの時どうかしていたんだと思う。
クリスマスソングがきっとそうさせた、なんて思っていたい。
凛と歩いているように見えた彼女は、どんどんとペースを落とさずに歩いて行き。
高台にある公園へと寄った。
7時をとっくに過ぎていて、あたりには4本の電灯が小さく公園を照らしていた。
こんな風がよく通る寒い日に高台の公園に来たがる人なんてそうそういない。
今、この公園には城ヶ崎と、公園の入り口で城ヶ崎を見てる(今考えれば恐ろしく不審者)俺だけ。
正直、城ヶ崎のようなザ・お嬢様には、こんな公園似合わないなんて思った。
俺がそんなことを思っても、彼女はそんな俺の存在に全く気付いていなくて。
城ヶ崎は、象の形をした滑り台の足元部分に作られた小さな空間に入っていった。
そして…
その時、彼女がどうしてこんな誰もいない公園にたった1人で来たのかがわかった。
「冬休みは……一緒にディナーに行こうって…約束したじゃんっっ」
鼻をすする音と、そんな声が中から聞こえてきて。
「ほんっと、大っ嫌い大っ嫌い大っ嫌いっ!!パパなんか大っ嫌いっ!!!!」
学校で悪党にしか見えなかった彼女が。
自分に自信しかないように見えていた彼女が。
まるで小学生みたいにわんわん泣きながら何度も父親のことを呼んでいるのを聞いて。
─────俺が彼女を守りたい。
そんなことを、夜空に舞った自分の吐いた白い息を見て、そう思った。