一匹少女が落ちるまで
1年前、まだ城ヶ崎の泣き顔を見る前。
俺は一度、城ヶ崎とそのグループがドラッグストアでなにやらコソコソとしているのを見たことがあった。
その中心にいたのは城ヶ崎で。
多分あの時、城ヶ崎たちは万引きしていた。
めんどくさいことに関わりたくないと思っていた俺は見て見ぬ振りをしたけど、
城ヶ崎と一度だけ目があったっけ。
きっと彼女たちはあの時の話をみんなにしようとしたのだと思う。
自分たちだってあの時楽しそうに誰1人止める雰囲気なんてなかったのに。
「かばってくれなくてよかったのに」
「…そしたら城ヶ崎、マジでクラスのやつから…」
「いいの。別に」
「え?」
「あの時の商品はちゃんとお店に返したし」
「うそ…」
今まで見たことない落ち着いた笑顔で話す城ヶ崎に戸惑う。