一匹少女が落ちるまで
「ん、食べるよ。食べる」
「司に見つかっちゃう前に食べなね〜昔から、司は仲間外れにされるのが嫌いだからさ」
そう言って楽しそうにくしゃっと笑う絢。
あーあー。
可愛いとか濡れた髪がちょっとやらしいとか、触れたいとか、触ってとか。
どんどんいけないことを考えてしまう。
でも絢は何にもわかってない。
きっと彼女にとって俺はただの彼氏の弟か幼馴染みの弟に過ぎないんだ。
俺だって。
仲間外れは嫌いだよ。
「…絢」
俺はフォークをお皿の上に置いて、少し欠けたタルトを見つめたまま、彼女の名前を呼ぶ。
ちゃんと、区切りをつけなきゃ。
大きな間違いを犯す前に。