一匹少女が落ちるまで
「好き」
少しでも期待した。
兄貴には悪いけど。
いいじゃん。どうせ期待したってそんなことにはなるわけないから、ほんの少し夢を見させてくれても。
「……あ、あぁ。私も好き!タルト!」
戸惑った絢の顔も正直かなり好きだったりして、もっと困らせて見たいなんて思って。
絢。
「タルトじゃないよ」
「……っ」
ベッドに下ろしていた腰を上げて立ち上がり、俺は絢のすぐ目の前に座った。
「え、大雅、タルト嫌いだっけ?じゃ、私代わりに食べよっか……っ!」
俺から距離を取ろうと、ケーキに体を向けた絢の手首を握った。
実際に触って見ると、やっぱり華奢で、余計女の子を感じさせるそれに狂わされないように制御する。