一匹少女が落ちるまで
「ちゃんと聞いてよ」
「……っ」
今までずっと
「俺、絢のこと好き…」
「……」
「だったよ」
「…えっ」
顔を晒していた絢が、こっちを見た。
「好き、だった。過去形」
過去にする。
もう君にそう告げた瞬間から。
「……いつ…から」
小さな声でそう聞く絢。
「ずっと前から。小さい頃からずっと。すげー好きだった」
「……そう…だったんだ」
彼女が少しでも顔を赤くしてくれたり、まんざらでもない顔をしてくれれば、変わったりしたのかな。
でも彼女は一切そんな顔なんてしなくて、ただ本当に困った顔をしていた。
「本当はちょっと気付いてた?」
俺はそう言って、絢のタルトを一口勝手にもらった。
近くにあったのが絢のタルトだったし、とにかく緊張でカラカラな口を甘酸っぱいタルトで潤したかった。
少しだけ本心を言うと、これが最初で最後だって気持ちで、絢のフォークを使うことで間接キスを味わいたかったのかもなんて。
俺はやっぱり、いつまでたってもガキだ。