一匹少女が落ちるまで
──────ガチャ
「持ってくるから、ここで少し待ってて」
理央はそう言って、私をリビングに上げると冷蔵庫から麦茶を出してコップに注いでから2階へ上がる階段を登った。
入る前から思ってたけど…。
すごく立派な家だ。
理央、こんな素敵なうちに住んでるんだな…。
それなのに…。
あの時から図書室にくるようになった理央だけど、どうして家に帰らなかったんだろう。
────バタン
2階からドアを閉める音が聞こえた。
理央が降りてくる。
そう思って、私はもらった麦茶の入ったコップを流しに戻して階段の方へあるいた。
「素敵な家……」
『素敵な家ね』
そう言おうとして、私は声を飲み込んだ。
そこにいたのは理央ではなく、長い前髪で顔が見えなくなってる背の高い人だった。
お、おとこのひとだよね…。
「あ、す、すみませんっ」
私がそう言って謝ると、その人は私を無視してそのままキッチンへと向かった。