一匹少女が落ちるまで
「お待たせ、紫月。これ恐竜のおもちゃセット。ちっちゃい時父さんに買ってもらっ…紫月、どうかした?」
キッチンをガサゴソと漁る人を見ていると、2階から理央が荷物を持って降りて来た。
「あ、理央。あの人…誰ですか?」
私がキッチンを指差すと、理央は少し驚いた表情をしてから口を開いた。
「…俺の兄貴だよ」
いわゆる『引きこもり』に見える彼を見つめたまま、理央が少し気まずそうにそう言った。
「理央の…」
─────ガチャ
ドン、ドン、ドン、ドン
────?!
突然、ドアの開く音がすると、乱暴な歩き方が私たちがいるダイニングに近づいて来た。