一匹少女が落ちるまで
「誰から…聞いたの」
頬を抑えて俯いたままの理央は、静かにそう言った。
「父さんが今質問してるんだ!さっさと答えろ!」
「っ、、、父さんに言うことなんて…何もないよ」
「っ!ふざけるなっ!!お前もあのクズのようになる気か!!」
理央のお父さんはそうやって、理央のお兄さんを指差した。
クズ…。
どうして、自分の息子にそんなことを言えるの?
「兄貴は…クズなんかじゃないよ」
やっと少し顔を上げた理央は、力強くそう言った。
「はぁ?なんだ。お前もあいつみたいになりたいのか!父さんがどんだけお前のバスケを応援してきたかわかってるのか!」
『部活辞めたから』
初めて図書室で話した時、理央は切なそうな顔をしながらそう言っていたっけ。
どうしてあの時あんな顔をしていたのか。
どうしてバスケを辞めたのか。
聞けなかったこと。
聞きたかったこと。
「もういい。全員出ていけ!!」
「父さん…」
「お前らはもう私の子供じゃない!!さっさと出てけ!!」
「あのっ!」
怒鳴るお父さんに、声を張ってそう声をかける。
「なんだ」
私を睨み付けてそう言う理央のお父さん。
「理央の話も、お兄さんの話も聞いてあげれば─────」
「部外者は口を挟まないでくれ。君も出ていきなさい」
私の張り上げた声も虚しく、
私たちは渋々、家を後にした。