一匹少女が落ちるまで
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「…本当は、足、とっくに治ってんだ」
夕食後、みんなが双子たちを寝かしつけてくれた後、リビングのローテーブルでお茶を飲ん出たら、理央が突然口を開いた。
「桜庭くん…どう言うこと?」
先にそう聞いたのは、玲奈。
「前の大会で怪我をしたのは本当。だけど、医者にも部活に出てもいいって言われたんだ」
「どうして、もうできないなんて嘘なんか」
「…できるけど、もうやりたくないからかな」
「バスケ、嫌いになったのか?」
赤羽くんにそう聞かれて、理央は首を横に振る。
「好きだよ。だけど、嫌いになりかけた。何度も。だから、嫌いになる前に辞めた…なんて、かっこよく言えたらいいんだけど」
「どう言うこと?」