一匹少女が落ちるまで
「バスケは小さい頃からずっと好きで。父さんも元バスケ部だったから、昔はよく兄貴も入れて3人でバスケしてたんだ。その時間がすごく好きで」
「……」
理央の隣に座る理汰さんは黙ったまま理央の話に耳を傾けていた。
「だけど…」
「俺が全部悪いんだ」
───っ!
そう小さく口を開いたのは、今までずっと黙っていた、理汰さんだった。
「違うよ、兄貴は…」
「いや」
前髪で顔を隠したまま、理汰さんは話し続ける。
「俺が、桐ヶ丘の受験に落ちてからだよ。父さんがあんな風になってしまったのは」
「あんな風」
今日初めて見た理央のお父さんを思い出す。
自分の子供をいきなり思い切り殴って、クズ呼ばわりしていた。
「昔はね、あんなんじゃなかったんだよ」