一匹少女が落ちるまで
【side 理汰】


彼女に言われるまで、俺はそれまでずっと


自分の人生はもう終わったんだと思っていた。


受験に失敗して、親の期待に応えられなかった俺は、父さんが言うように『クズ』で。


隠したくなるような恥ずかしい息子なんだって。



でも、彼女は全く正反対のことを言った。



『まだ何も始まってない』



初対面の彼女に、あんな風に叱られて。


年下の彼女がすごく頼もしかった。



園子ちゃんの言うとおりなのかもしれない。


俺は、自分を責めているように口では言っていたけど、実際、理央のために何1つ行動なんかしなかった。


それは、何をしてあげればいいのかわからなかったんじゃなくて、今の自分がなんの悪いこともしていないって心のどこかで自覚していたから。



『父さんがジッとしとけと言うから』


そんなのを言い訳にしていたのかもしれない。



逃げてばかりで行動してなかった俺自身、被害者面する権利なんてないんだ。



< 417 / 487 >

この作品をシェア

pagetop