一匹少女が落ちるまで
「父さんは俺たちのことなんて考えてないよ。ずっと、会社が成功していくにつれて、自分のメンツのことしか考えてないっ!」
本当の気持ちを話すのはすごく怖くて。
体が小刻みに震えていたのがわかるけど。
その瞬間、隣に座った園子ちゃんが、優しく俺の手を握ってくれた。
「お前ら、親をなんだと思ってるんだ!!」
立ち上がってそう怒鳴り散らす父さん。
昔とはまるで別人だ。
あの頃は─────。
無邪気に笑う俺たちの頭を雑に撫でてくれて。
その大きな手でしっかり俺たち2人を抱きしめてくれていた。
変わってしまった。
「お前らのために頑張って働いて、お前らの将来を思って応援してる親に向かってよくもそんなことが…呆れたよ」
「……っ」
「だから言ったんだ…母さんは甘やかし過ぎだって」
そしてそうやって。
母さんのせいにするんだ。
「2度と顔を見せないでくれ」
父さんはそう言って、自分の部屋に行ってしまった。