一匹少女が落ちるまで










「いや、まさか俺の息子とヤスの娘さんが同じ学校に通っているなんてな」



目の前で、楽しそうに笑って話す理央のお父さんは昨日見た人とまるで別人だ。


「ヤスがまだ独身の時に俺たちは結婚式を挙げたから…だから、妻と凛子さんは初めましてなわけか…」



正式には昨日の夜が初めましてだけど。
そんなことを心の中で呟く。


まさか。

お父さんと理央のお父さんが中学の同級生でその時一緒にバスケをしていたなんて、すごく驚きだ。



「紫月から、桜庭って苗字が出てくるからびっくりして、偶然だと思いながら理央くんの話聞いてるうちに、もしかして父親って登(のぼる)なんじゃないかって思ってね。あっててよかったよ」



お父さんはそう言って笑った。


「それで、今日は仕事は?」


理央のお父さんはスーツ姿のお父さんにそう聞いた。


「妻も僕もこれから仕事だよ。本当はいつも朝早いんだけど、今日は大事な用を済ませてからと思ってね」



「…大事な用?」



紅茶をすすってから、理央のお父さんが聞き返す。



「理央くんと理汰くんと話したい」



お父さんは真剣な顔をしてそう言った。




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