一匹少女が落ちるまで
「いや、あの…」
多分、理央のお父さんは嘘をつこうとした。
でも、全てを知ってる私を見てから、口をゴニョゴニョと濁しただけ。
「…登、いるんだろ?2人とも」
「紫月ちゃんから何を聞いたのか知らないが、お前には関係ないことだ。また近いうちに2人だけで飲みにでも…」
「登」
「……わかったよ。」
登さんは、渋々そういうと、2階へ向かう階段に向かって、2人の名前を呼んだ。
トントントンと階段を降りる足音が2人分聞こえると、昨日の夜の格好のままの2人がヒョイっと顔を出した。
「…こちら、父さんの同級生の雨宮 泰人(やすと)さんだ。挨拶しなさい」
そう言われて、1番驚いた顔をしたのは理央で、お客さん用のソファに座る人の中に私を見つけて、また驚いた顔をした。