一匹少女が落ちるまで
「だったら、自分の子供が辛い思いをしていたなら真っ先に味方になるもんじゃないのか?」
「…どういうことだ。俺が2人の味方になってないって言いたいのか?2人のことを父親としてずっと支えて来たこの俺が?子供の前で何を言いだすんだ」
登さんはそう言って少しイラついたそぶりを見せる。
「自分の夢を子供に押し付けることを、支えるなんて言わないよ」
「…はぁ?!ふざけるな!俺のどこが…」
「そうだろ?」
「いいか?お前は何にもわかってない。子供の前でいい顔したいだけだろ?いくらダチでも踏み込んだらいけないことがある。これは俺たち家族の問題だ。ヤスが口出しするような話じゃない。だいたいなんなんだ。子供の話、真に受けて…」
「登、彼らはもう子供じゃない。それは君が1番わかってるはずだろ?手取り足取り親が教える時期はもう過ぎている。黙って見守らなきゃいけない。そんな時彼らが傷ついた時、何も言わないでまず抱きしめることが親としてできる大きなことだと思うけどね」
お父さんはずっと穏やかに話し続ける。
でも、お父さんの話を聴きながら少し思うことがある。
お父さんは、登さんにそんな風に教えられるほど、私にしたことなんてないよ。